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20.7.7 リピートイベント

マウスを移動せずに同じマウスボタンを素早く2回以上連続して押下すると、Emacsは2回目とそれ以降の押下にたいして特別なリピート(repeat)マウスイベントを生成します。

もっとも一般的なリピートイベントはダブルクリック(double-click)イベントです。Emacsはボタンを2回クリックしたときにダブルクリックイベントを生成します。このイベントは、(すべてのクリックイベントが通常そうであるように)ボタンをリリースしたときに発生します。

ダブルクリックイベントのイベント型にはプレフィクス‘double-’が含まれます。したがってmetaを押しながら2つ目のマウスボタンをダブルクリックすると、LispプログラムにはM-double-mouse-2が渡されます。ダブルクリックイベントがバインディングをもたなければ、対応する通常のクリックイベントのバインディングが実行に使用されます。したがって実際に望んだ場合でなければダブルクリック機能に注意を払う必要はありません。

ユーザーがダブルクリックを行うとき、Emacsはまず通常のクリックイベントを生成して、その後ダブルクリックイベントを生成します。したがってダブルクリックイベントのコマンドバインディングは、すでにシングルクリックイベントが実行された想定でデザインしなければなりません。つまりシングルクリックの結果から開始して、ダブルクリックの望むべき結果を生成しなければならないのです。

これはダブルクリックの意味合いが、シングルクリックの意味合いの何らかにもとづいて“構築”される場合は便利です。これはダブルクリックにたいするユーザーインターフェイスにおける推奨されるデザインプラクティスです。

ボタンをクリックした後にもう一度ボタンを押下して、そのままマウスの移動を開始すると、最終的にボタンをリリースしたときダブルドラッグ(double-drag)イベントが取得されます。このイベント型には単なる‘drag’のかわりに‘double-drag’が含まれます。ダブルドラッグイベントがバインディングをもたなければ、それがあたかも通常のドラッグイベントだったかのようにEmacsはかわりのバインディングを探します。

ダブルクリックやダブルドラッグイベントの前に、Emacsはユーザーが2回目にボタンを押したタイミングでダブルダウン(double-down)イベントを生成します。このイベント型には単なる‘down’のかわりに‘double-down’が含まれます。ダブルダウンイベントがバインディングをもたなければ、それがあたかも通常のボタンダウンイベントだったかのようにEmacsはかわりのバインディングを探します。どちらの方法でもバインディングが見つからなければダブルダウンイベントは無視されます。

要約するとボタンをクリックしてすぐにまた押したとき、Emacsは1回目のクリックにたいしてダウンイベントとクリックイベントを生成して、2回目に再度ボタンを押したときにダブルダウンイベント、そして最後にダブルクリックまたはダブルドラッグイベントを生成します。

ボタンを2回クリックした後にもう一度押したとき、それらすべてが素早く連続で行われたら、Emacsはトリプルダウン(triple-down)イベントと、その後続のトリプルクリック(triple-click)トリプルドラッグ(triple-drag)イベントを生成します。これらイベントのイベント型には‘double’のかわりに‘triple’が含まれます。トリプルイベントがバインディングをもたなければEmacsは対応するダブルイベントに使用されるであろうバインディングを使用します。

ボタンを3回以上クリックした後に再度ボタンを押すと、3回を超えた押下にたいするイベントはすべてトリプルイベントになります。Emacsはクワドループル(quadruple: 4連)、クインティプル(quintuple: 5連)、...等のイベントにたいして個別のイベント型をもちません。しかしボタンが何回押下されたかを正確に調べるためにイベントリストを調べることができます。

Function: event-click-count event

この関数はeventを誘因した連続するボタン押下の回数をリターンする。eventがダブルダウン、ダブルクリック、ダブルドラッグなら値は2である。eventがトリプルイベントなら値は3以上になる。eventが(リピートイベントではない)通常のマウスイベントなら値は1。

User Option: double-click-fuzz

リピートイベントを生成するためには、ほぼ同じスクリーン位置で連続でマウスボタンを押下しなければならない。double-click-fuzzの値はダブルクリックを生成するために連続する2回のクリック間で、マウスが移動(水平と垂直)するかもしれない最大ピクセル数を指定する。

この変数はドラッグとみなされるマウスモーションの閾値でもある。

User Option: double-click-time

リピートイベントを生成するためには、連続するボタン押下のミリ秒間隔がdouble-click-timeの値より小さくなければならない。double-click-timenilにセットすると複数回クリック検知が完全に無効になる。tにセットすると時間制限が取り除かれる。その場合はEmacsは位置だけで複数回のクリックを検知する。