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6.8 オブジェクト用固定長リングの管理

リング(ring)は挿入、削除、ローテーション、剰余(modulo)でインデックスづけされた、参照と走査(traversal)をサポートする固定長のデータ構造です。ringパッケージにより効率的なリングデータ構造が実装されています。このパッケージは、このセクションにリストした関数を提供します。

killリングやマークリングのような、Emacsにあるいくつかの“リング”は、実際には単なるリストとして実装されていることに注意してください。したがって、これらのリングにたいしては、以下の関数は機能しないでしょう。

Function: make-ring size

この関数はsizeオブジェクトを保持できる、新しいリングをリターンする。sizeは整数。

Function: ring-p object

この関数はobjectがリングならt、それ以外はnilをリターンする。

Function: ring-size ring

この関数はringの最大の要素数をリターンする。

Function: ring-length ring

この関数はringに現在含まれるオブジェクトの数をリターンする。値がring-sizeのリターンする値を超えることはない。

Function: ring-elements ring

この関数はring内のオブジェクトのリストをリターンする。リストの順序は新しいオブジェクトが先頭になる。

Function: ring-copy ring

この関数は新しいリングとしてringのコピーをリターンする。新しいリングはringと同じ(eqな)オブジェクトを含む。

Function: ring-empty-p ring

この関数はringが空ならt、それ以外はnilをリターンする。

リング内の1番新しい要素は常にインデックス0をもちます。より大きいインデックスは、より古い要素に対応します。インデックスはリング長のmoduloにより計算されます。インデックス-1は1番古い要素、-2は次に古い要素、...となります。

Function: ring-ref ring index

この関数はインデックスindexにあるring内のオブジェクトをリターンする。indexには負やリング長より大きい数を指定できる。ringが空ならring-refはエラーをシグナルする。

Function: ring-insert ring object

この関数は1番新しい要素としてobjectringに挿入してobjectをリターンする。

リングが満杯なら新しい要素用の空きを作るために、挿入により1番古い要素が削除される。

Function: ring-remove ring &optional index

ringからオブジェクトを削除してそのオブジェクトをリターンする。引数indexはどのアイテムを削除するかを指定する。これがnilなら、それは1番古いアイテムを削除することを意味する。ringが空ならring-removeはエラーをシグナルする。

Function: ring-insert-at-beginning ring object

この関数は1番古い要素としてobjectringに挿入する。リターン値に意味はない。

リングが満杯なら、この関数は挿入される要素のための空きを作るために1番新しい要素を削除する。

リングサイズを超過しないよう注意すれば、そのリングをFIFO(first-in-first-out: 先入れ先出し)のキューとして使用することができます。たとえば:

(let ((fifo (make-ring 5)))
  (mapc (lambda (obj) (ring-insert fifo obj))
        '(0 one "two"))
  (list (ring-remove fifo) t
        (ring-remove fifo) t
        (ring-remove fifo)))
     ⇒ (0 t one t "two")