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このセクションでは非同期プロセス(asynchronous process)を作成する方法について説明します。非同期プロセスは作成後はEmacsと並列に実行されて、Emacsは以降のセクション(Input to ProcessesとOutput from Processesを参照)で説明する関数を使用してプロセスとコミュニケーションができます。プロセスコミュニケーションは部分的に非同期なだけであることに注意してください。Emacsは特定の関数を呼び出したときだけプロセスにデータを送信でき、Emacsは入力の待機中か一定の遅延時間の後にのみプロセスのデータを受け取ることができます。
非同期プロセスはpty(pseudo-terminal:
疑似端末)かたはpipeのいずれかを通じて制御されます。ptyかpipeの選択は、デフォルトでは変数process-connection-type
(以下参照)の値にもとづいてプロセス作成時に行われます。ptyが利用可能なら、通常はShellモード内のようにユーザーから可視なプロセスに適しています。ptyではプロセスとその子プロセスとの間でジョブ制御(C-c、C-z、...等)が可能であり、対話的なプログラムはptyを端末デバイスとして扱いますが、これらはpipeではサポートされない機能だからです。Lispプログラムの内部的な目的のために使用されるサブプロセスにたいしては、pipeのほうが適している場合が多々あります。それはpipeがより効率的であり、ptyが大量の文字(500byte前後)にたいして導入する迷入文字インジェクション(stray
character
injections)にたいして免疫があるのが理由です。さらに多くのシステムではptyの合計数に制限があり、それを浪費するのは得策ではありません。
この関数は非同期サブプロセスを開始するための基本的な低レベルなプリミティブである。これはサブプロセスを表すプロセスオブジェクトをリターンする。以下で説明するより高レベルなstart-process
と比較すると、この関数はキーワード引数を受け取り、より柔軟であり、単独の呼び出しでプロセスフィルターやセンチネルを指定できる。
引数argsはkeyword/argumentペアのリスト。キーワードの省略は値nil
でそれを指定することと常に等価。以下は意味のあるキーワード:
プロセス名として文字列nameを使用する。その名前のプロセスがすでに存在すれば、(‘<1>’、...の追加により)一意となるようにnameを修正する。
プロセスバッファーとしてbufferを使用する。値がnil
なら、そのサブプロセスには何のバッファーも関連付けられない。
プロセスのコマドラインとしてcommandを使用する。値はプログラムの実行可能ファイル名で始まり、後にプログラムの引数として与える文字列が続くリストであること。リストの最初の要素がnil
なら、Emacsは新たな擬似端末(pty)を作成して、実際には何もプログラムを実行せずに入出力をbufferに関連付ける。この場合には残りのリスト要素は無視される。
codingがシンボルなら、それはその接続にたいする読み取りと書き込みの両方で使用するコーディングシステムを指定する。codingがコンスセル(decoding . encoding)
なら読み取りにdecoding、書き込みにencodingが使用される。プログラムに書き込むデータのエンコーディングに使用されるコーディングシステムは、コマンドライン引数のエンコーディングにも使用される(しかしプログラム自身にたいしてファイル名を別のファイル名にエンコードすることはない。file-name-coding-systemを参照)。
codingがnil
なら、デフォルトのコーディングシステム検出ルールを適用する。Default Coding Systemsを参照のこと。
サブプロセスとの対話に使用するデバイスのタイプを初期化する。指定できる値はptyを使用するpty
、pipeを使用するpipe
、またはprocess-connection-type
変数の値のデフォルトデバイスを使用するnil
。:stderr
パラメーターに非nil
値が指定されると、このパラメーターとprocess-connection-type
の値は無視される。この場合にはタイプは常にpipe
になる。
プロセスqueryフラグをquery-flagに初期化する。Query Before Exitを参照のこと。
stoppedが非nil
なら、停止状態でプロセスを開始する。
プロセスフィルターをfilterに初期化する。未指定ならデフォルトフィルターが提供されるが、これは後からオーバーライドできる。Filter Functionsを参照のこと。
プロセスセンチネルをsentinelに初期化する。未指定ならデフォルトセンチネルが使用されるが、これは後からオーバーライドできる。Sentinelsを参照のこと。
プロセスの標準エラーにstderrを割り当てる。値が非nil
ならバッファー、または以下で説明するmake-pipe-process
で作成されたpipeのいずれかであること。
実際の接続情報で修正されたオリジナルの引数リストはprocess-contact
を通じて利用できる。
この関数は子プロセスにアタッチ可能な双方向のpipeを作成する。これはmake-process
の:stderr
キーワードと併用することで有用。この関数はプロセスオブジェクトをリターンする。
引数argsはkeyword/argumentペアのリスト。キーワードの省略はそのキーワードに値nil
を指定することと常に等価。
以下は意味のあるキーワード。
プロセス名として文字列nameを使用する。make-process
の場合のように、一意にするために必要に応じて変更され得る。
プロセスバッファーとしてbufferを使用する。
codingがシンボルなら、それはその接続にたいする読み取りと書き込みの両方で使用するコーディングシステムを指定する。codingがコンスセル(decoding . encoding)
なら読み取りにdecoding、書き込みにencodingが使用される。
codingがnil
なら、デフォルトのコーディングシステム検出ルールを適用する。Default Coding Systemsを参照のこと。
プロセスqueryフラグをquery-flagに初期化する。Query Before Exitを参照のこと。
stoppedが非nil
なら、停止状態でプロセスを開始する。
プロセスフィルターをfilterに初期化する。未指定ならデフォルトフィルターが提供されるが後で変更できる。Filter Functionsを参照のこと。
プロセスセンチネルをsentinelに初期化する。未指定ならデフォルトセンチネルが使用されるが後で変更できる。Sentinelsを参照のこと。
実際の接続情報で修正されたオリジナルの引数リストはprocess-contact
を通じて利用できる。
この関数はcall-process
の類似したインターフェースを提供する、make-process
周辺の高レベルのラッパー。これは新たに非同期サブプロセスを作成して、指定されたprogramの実行をその内部で開始する。これはLispで新たなサブプロセスを意味するプロセスオブジェクトをリターンする。引数nameはプロセスオブジェクトの名前を指定する。make-process
の場合のように、一意な名前となるように必要に応じて修正する。バッファーbuffer-or-nameはそのプロセスに関連付けるバッファー。
programがnil
ならEmacsは疑似端末(pty)を新たにオープンして、サブプロセスを新たに作成することなくptyの入力と出力をbuffer-or-nameに関連付ける。この場合には残りの引数argsは無視される。
残りのargsはサブプロセスにコマンドライン引数を指定する文字列。
以下の例では1つ目のプロセスを開始して100秒間実行(というよりはsleep)される。その間に2つ目のプロセスを開始して、一意性を保つために‘my-process<1>’という名前が与えられる。これは1つ目のプロセスが終了する前にバッファー‘foo’の最後にディレクトリーのリストを挿入する。その後に2つ目のプロセスは終了して、その旨のメッセージがバッファーに挿入される。さらに遅れて1つ目のプロセスが終了して、バッファーに別のメッセージが挿入される。
(start-process "my-process" "foo" "sleep" "100") ⇒ #<process my-process>
(start-process "my-process" "foo" "ls" "-l" "/bin") ⇒ #<process my-process<1>> ---------- Buffer: foo ---------- total 8336 -rwxr-xr-x 1 root root 971384 Mar 30 10:14 bash -rwxr-xr-x 1 root root 146920 Jul 5 2011 bsd-csh … -rwxr-xr-x 1 root root 696880 Feb 28 15:55 zsh4 Process my-process<1> finished Process my-process finished ---------- Buffer: foo ----------
start-process
と同じようにこの関数は非同期サブプロセスを開始して、その内部でprogramを実行してそのプロセスオブジェクトをリターンする。
start-process
との違いは、この関数がdefault-directory
の値にもとづいてファイルハンドラーを呼び出すかもしれないという点である。このハンドラーはローカルホスト上、あるいはdefault-directory
に応じたリモートホスト上でprogramを実行すること。後者の場合には、default-directory
のローカル部分はそのプロセスのワーキングディレクトリーになる。
この関数はprogram、またはargsの残りにたいしてファイル名ハンドラーの呼び出しを試みない。
そのファイルハンドラーの実装によっては、リターン結果のプロセスオブジェクトにprocess-filter
やprocess-sentinel
を適用することができないかもしれない。Filter FunctionsとSentinelsを参照のこと。
いくつかのファイルハンドラーはstart-file-process
をサポートしないかもしれない(たとえばange-ftp-hook-function
関数)。そのような場合には、この関数は何も行わずにnil
をリターンする。
この関数はstart-process
と同様だが、指定されたcommandの実行にshellを使用する点が異なる。引数commandはshellコマンド文字列。変数shell-file-name
はどのshellを使用するかを指定する。
make-process
やstart-process
でプログラムを実行せずにshellを通じて実行することの要点は、引数内のワイルドカード展開のようなshell機能を利用可能にするためである。そのためにはコマンド内に任意のユーザー指定引数を含めるなら、任意の特別なshell文字がshellでの特別な意味をもたないように、まずshell-quote-argument
でそれらをクォートするべきである。Shell Argumentsを参照のこと。ユーザー入力にもとづいたコマンド実行時には当然セキュリティ上の影響も考慮するべきである。
この関数はstart-process-shell-command
と似ているが、内部的にstart-file-process
を使用する点が異なる。これによりdefault-directory
に応じてリモートホスト上でもcommandを実行できる。
この変数は非同期サブプロセスと対話するために使用するデバイスタイプを制御する。これが非nil
の場合には利用可能ならpty、それ以外ならpipeが使用される。
process-connection-type
の値はmake-process
やstart-process
の呼び出し時に効果を発揮する。そのためにこれらの関数の呼び出し前後でこの変数をバインドすることにより、サブプロセスとやり取りする方法を指定できる。
この変数の値はmake-process
が非nil
値の:stderr
パラメーターで呼び出された際には無視される。この場合には、Emacsはpipeを使用してプロセスと対話する。
(let ((process-connection-type nil)) ; pipeを使用
(start-process …))
与えられたサブプロセスが実際にはpipeとptyのどちらを取得したかを判断するには関数process-tty-name
を使用する(Process Informationを参照)。
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