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21.12 キーバインディングの変更

キーのリバインド(rebind: 再バインド、再束縛)は、キーマップ内でそのキーのバインディングエントリーを変更することによって行われます。グローバルキーマップ内のバインディングを変更すると、その変更は(たとえローカルバインディングによりグローバルバインディングをshadowしているバッファーでは直接影響しないとしても)すべてのバッファーに影響します。カレントバッファーのローカルマップを変更すると、通常は同じメジャーモードを使用するすべてのバッファーに影響します。関数global-set-keylocal-set-keyは、これらの操作のための使いやすいインターフェイスです(Key Binding Commandsを参照)。より汎用的な関数define-keyを使用することもできます。その場合には変更するマップを明示的に指定しなければなりません。

Lispプログラムでリバインドするキーシーケンスを選択するときは、さまざまなキーの使用についてのEmacsの慣習にしたがってください(Key Binding Conventionsを参照)。

リバインドするキーシーケンスの記述では、コントロール文字とメタ文字にたいして特別なエスケープシーケンスを使用すると良いでしょう(String Typeを参照)。構文‘\C-’は後続する文字がコントロール文字でること、‘\M-’は後続する文字がメタ文字であることを意味します。したがって文字列"\M-x"は1つのM-x"\C-f"は1つのC-f"\M-\C-x""\C-\M-x"は1つのC-M-xとして読み取られます。ベクター内でもこのエスケープシーケンス、および文字列では使用できない他のエスケープシーケンスを使用できます。一例は‘[?\C-\H-x home]’です。Character Typeを参照してください。

キー定義とルックアップ関数は、ベクターであるようなキーシーケンス内のイベント型にたいして別の構文を受け入れます。修飾名に基本イベント(文字かファンクションキー名)を付加したものを含んだリストを使用できます。たとえば(control ?a)?\C-a(hyper control left)C-H-leftと等価です。このようなリストの利点の1つは、コンパイル済みファイル内に修飾ビットの正確な数値コードが出現しないことです。

以下の関数はkeymapがキーマップでない場合、およびkeyがキーシーケンスを表す文字列やベクターでない場合にはエラーをシグナルします。リストであるようなイベントにたいする略記として、イベント型(シンボル)を使用できます。kbd関数(Key Sequencesを参照)はキーシーケンスを指定するための便利な方法です。

Function: define-key keymap key binding

この関数はkeymap内でkeyにたいするバインディングをセットする(keyが長さ2以上のイベントなら、その変更は実際はkeymapから辿られる他のキーマップで行なわれる)。引数bindingには任意のLispオブジェクトを指定できるが、意味があるのは特定のオブジェクトだけである(意味のある型のリストはKey Lookupを参照)。define-keyのリターン値はbindingである。

key[t]なら、それはkeymap内でデフォルトバインディングをセットする。イベントが自身のバインディングをもたないとき、そのキーマップ内にデフォルトバインディングが存在すればEmacsコマンドループはそれを使用する。

keyのすべてのプレフィクスは、プレフィクスキー(キーマップにバインドされる)か、あるいは未定義でなけらばならず、それ以外ならエラーがシグナルされる。keyのいくつかのプレフィクスが未定義なら、define-keyはそれをプレフィクスキーとして定義するので、残りのkeyは指定されたように定義できる。

前にkeymap内でkeyにたいするバインディングが存在しなければ、新たなバインディングがkeymapの先頭に追加される。キーマップ内のバインディングの順序はキーボード入力にたいし影響を与えないが、メニューキーマップにたいしては問題となる(Menu Keymapsを参照)。

以下はsparseキーマップを作成してその中にバインディングをいくつか作成する例:

(setq map (make-sparse-keymap))
    ⇒ (keymap)
(define-key map "\C-f" 'forward-char)
    ⇒ forward-char
map
    ⇒ (keymap (6 . forward-char))

;; C-xにたいしsparseサブマップを作成して
;; その中でfをバインドする
(define-key map (kbd "C-x f") 'forward-word)
    ⇒ forward-word
map
⇒ (keymap
    (24 keymap                ; C-x
        (102 . forward-word)) ;      f
    (6 . forward-char))       ; C-f

;; C-pctl-x-mapにバインド
(define-key map (kbd "C-p") ctl-x-map)
;; ctl-x-map
⇒ [nil … find-file … backward-kill-sentence]

;; ctl-x-map内でC-ffooにバインド
(define-key map (kbd "C-p C-f") 'foo)
⇒ 'foo
map
⇒ (keymap     ; ctl-x-map内のfooに注目
    (16 keymap [nil … foo … backward-kill-sentence])
    (24 keymap
        (102 . forward-word))
    (6 . forward-char))

C-p C-fにたいする新たなバインディングの格納は、実際にはctl-x-map内のエントリーを変更することによって機能し、これはデフォルトグローバルマップ内のC-p C-fC-x C-fの両方のバインディングを変更する効果をもつことに注意。

関数substitute-key-definitionはキーマップから特定のバインディングをもつキーをスキャンして、それらを異なるバインディングにリバインドする。より明快かつ多くの場合には同じ結果を生成できる他の機能として、あるコマンドから別のコマンドへのリマップがある(Remapping Commandsを参照)。

Function: substitute-key-definition olddef newdef keymap &optional oldmap

この関数はkeymap内でolddefにバインドされるすべてのキーについてolddefnewdefに置き換える。言い換えるとolddefが出現する箇所のすべてをnewdefに置き換える。この関数はnilをリターンする。

たとえば以下をEmacsの標準バインディングで行うとC-x C-fを再定義する:

(substitute-key-definition
 'find-file 'find-file-read-only (current-global-map))

oldmapが非nilなら、どのキーをリバインドするかをoldmap内のバインディングが決定するようにsubstitute-key-definitionの動作を変更する。リバインディングは依然としてoldmapではなくkeymapで発生する。したがって他のマップ内のバインディングの制御下でマップを変更することができる。たとえば、

(substitute-key-definition
  'delete-backward-char 'my-funny-delete
  my-map global-map)

これは標準的な削除コマンドにグローバルにバインドされたキーにたいしてmy-map内の特別な削除コマンドを設定する。

以下はキーマップの置き換え(substitution)の前後を示した例:

(setq map '(keymap
            (?1 . olddef-1)
            (?2 . olddef-2)
            (?3 . olddef-1)))
⇒ (keymap (49 . olddef-1) (50 . olddef-2) (51 . olddef-1))

(substitute-key-definition 'olddef-1 'newdef map)
⇒ nil
map
⇒ (keymap (49 . newdef) (50 . olddef-2) (51 . newdef))
Function: suppress-keymap keymap &optional nodigits

この関数はself-insert-commandをコマンドundefinedにリマップ(Remapping Commandsを参照)することによってfullキーマップのコンテンツを変更する。これはすべてのプリント文字を未定義にする効果をもつので、通常のテキスト挿入は不可能になる。suppress-keymapnilをリターンする。

nodigitsnilなら、suppress-keymapは数字がdigit-argument-negative-argumentを実行するように定義する。それ以外は残りのプリント文字と同じように、それらの文字も未定義にする。

suppress-keymap関数はyankquoted-insertのようなコマンドを抑制(suppress)しないのでバッファーの変更は可能。バッファーの変更を防ぐには、バッファーを読み取り専用(read-only)にすること(Read Only Buffersを参照)。

この関数はkeymapを変更するので、通常は新たに作成したキーマップにたいして使用するだろう。他の目的のために使用されている既存のキーマップに操作を行うと恐らくトラブルの原因となる。たとえばglobal-mapの抑制はEmacsをほとんど使用不可能にするだろう。

この関数はテキストの挿入が望ましくないメジャーモードの、ローカルキーマップ初期化に使用され得る。しかしそのようなモードは通常はspecial-mode (Basic Major Modesを参照)から継承される。この場合にはそのモードのキーマップは既に抑制済みのspecial-mode-mapから自動的に受け継がれる。以下にspecial-mode-mapが定義される方法を示す:

(defvar special-mode-map
  (let ((map (make-sparse-keymap)))
    (suppress-keymap map)
    (define-key map "q" 'quit-window)
    …
    map))

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