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12.12 ファイルローカル変数

ファイルにローカル変数の値を指定できます。そのファイルをvisitしているバッファー内で、これらの変数にたいしてバッファーローカルなバインディングを作成するために、Emacsはこれらを使用します。ファイルローカル変数の基本的な情報については、Local Variables in Files in The GNU Emacs Manualを参照してください。このセクションではファイルローカル変数が処理される方法に影響する関数と変数を説明します。

ファイルローカル変数が勝手に関数や、後で呼び出されるLisp式を指定できたら、ファイルのvisitによってEmacsが乗っ取られてしまうかもしれません。Emacsは既知のファイルローカル変数だけにたいして、指定された値が安全だと自動的にセットすることにより、この危険から保護します。これ以外のファイルローカル変数は、ユーザーが同意した場合のみセットされます。

追加の安全策としてEmacsがファイルローカル変数を読み込むとき、一時的にread-circlenilにバインドします(入力関数を参照)。これは循環認識と共有されたLisp構造からLispリーダーを保護します(循環オブジェクトの読み取り構文を参照)。

User Option: enable-local-variables

この変数はファイルローカル変数を処理するかどうかを制御する。以下の値が利用できる:

t(デフォルト)

安全な変数をセット、安全でない変数は問い合わせる(1回)。

:safe

安全な変数だけをセット、問い合わせはしない。

:all

問い合わせをせずに、すべての変数をセット。

nil

変数をセットしない。

その他

すべての変数にたいして問い合わせる(1回)。

Variable: inhibit-local-variables-regexps

これは正規表現のリストである。ファイルがこのリストの要素にマッチする名前をもつなら、すべてのファイルローカル変数のフォームはスキャンされない。どんなときにこれを使いたいかの例は、Emacsがメジャーモードを選択する方法を参照のこと。

Variable: permanently-enabled-local-variables

たとえenable-local-variablesnilであっても、いくつかのローカル変数セッティングは、デフォルトでは注意する必要があるだろう。これはデフォルトにおいてローカル変数lexical-bindingのセッティングの場合だけだが、この変数(シンボルのリスト)を使用して制御できる。

Function: hack-local-variables &optional handle-mode

この関数はカレントバッファーの内容により指定された任意のローカル変数にたいしてパースを行い、適切にバインドと評価を行う。変数enable-local-variablesはここでも効果をもつ。しかしこの関数は‘-*-行の、‘mode:’ローカル変数を探さない。set-auto-modeはこれを行ってenable-local-variablesも考慮する(Emacsがメジャーモードを選択する方法を参照)。

この関数はfile-local-variables-alist内に格納されたalistを調べて、各ローカル変数を順に適用することにより機能する。この関数は変数に適用する前(か後)に、before-hack-local-variables-hook(かhack-local-variables-hook)を呼び出す。alistが非nilの場合のみ、事前のフック(before-hook)を呼び出し、その他のフックは常に呼び出す。この関数はそのバッファーがすでにもつメジャーモードと同じメジャーモードが指定された場合は‘mode’要素を無視する。

オプションの引数handle-modetなら、この関数が行うのはメジャーモードを指定するシンボルをリターンすることだけであり、‘-*-行やローカル変数リストがメジャーモードを指定していればそのモード、それ以外はnilをリターンする。この関数はモードや他のファイルローカル変数をセットしない。handle-modeの値がniltのいずれでもなければ‘-*-行の‘mode’に関するすべてのセッティングとローカル変数リストは無視されて、別のセッティングが適用される。handle-modenilならすべてのファイルローカル変数がセットされる。

Variable: file-local-variables-alist

このバッファーローカルな変数は、ファイルローカル変数のセッティングのalistを保持する。alistの各要素は(var . value)という形式で、varはローカル変数のシンボル、valueはその値である。Emacsがファイルをvisitするとき、最初にすべてのファイルローカル変数をこのalistに収集して、その後で変数に1つずつ関数hack-local-variablesを適用する。

Variable: before-hack-local-variables-hook

Emacsはfile-local-variables-alistに格納されたファイルローカル変数を適用する直前にこのフックを呼び出す。

Variable: hack-local-variables-hook

Emacsはfile-local-variables-alistに格納されたファイルローカル変数を適用し終えた直後にこのフックを呼び出す。

ある変数にたいしてsafe-local-variableプロパティによって安全な値を指定できます。このプロパティは引数を1つとる関数です。与えられた値にたいして、その関数が非nilをリターンしたらその値は安全です。一般的に目にするファイル変数の多くは、safe-local-variableプロパティをもちます。これらのファイル変数にはfill-columnfill-prefixindent-tabs-modeが含まれます。ブーリーン値の変数にたいしては、プロパティの値にbooleanpを使用します。

Cソースコード内で定義された変数にsafe-local-variableプロパティを定義したければ、それらの変数の名前とプロパティをfiles.elのセクション“Safe local variables”のリストに追加してください。

defcustomを使用してユーザーオプションを定義する際には、defcustomに引数:safe functionを追加してsafe-local-variableプロパティをセットできます(カスタマイゼーション変数の定義を参照)。しかし:safeを使用して定義された安全性の述語は、そのdefcustomを含むパッケージのロード時の一度だけ認識されるものであり、それでは遅すぎることがしばしばあります。代替策としては、以下のようにオプションに安全性の述語を割り当てるためにautoloadクッキー(autoloadを参照)を使用できます:

;;;###autoload (put 'var 'safe-local-variable 'pred)

autoloadで指定された安全な値の定義は、そのパッケージのautoloadファイル(Emacsに同梱されたパッケージのほとんどではloaddefs.el)にコピーされて、セッションの開始からEmacsにより認識されます。

User Option: safe-local-variable-values

この変数はある変数の値が安全であることをマークする、別の方法を提供する。これはコンスセル(var . val)のリストでありvarは変数名、valはその変数にたいして安全な値である。

Emacsが一連のファイルローカル変数にしたがうかどうかユーザーに尋ねるとき、ユーザーはそれらの変数が安全だとマークすることができる。安全とマークするとsafe-local-variable-valuesにこれらのvariable/valueペアーが追加されて、ユーザーのカスタムファイルに保存する。

User Option: ignored-local-variable-values

特定のローカル変数にたいして常に完全に無視したい値がいくつかある場合には、この変数を使用できる。値はsafe-local-variable-valuesと同じ形式であり、ファイルが指定するローカル変数の処理時にこのリストに現れる値にセットされるファイルローカル変数は常に無視される。safe-local-variable-valuesの場合のように、ファイルローカル変数にしたがうべきかEmacsがユーザーに尋ねる際に、ユーザーは特定の値を恒久的に無視することを選択でき、この選択によってこの変数は変更されてユーザーのcustomファイルに保存される。この変数にある変数/値ペアーは、safe-local-variable-values内にある同一ペアーより優先される。

Function: safe-local-variable-p sym val

この関数は上記の条件に基づき、symに値valを与えても安全なら非nilをリターンする。

いくつかの変数は危険(risky)だと判断されます。ある変数が危険なら、その変数がsafe-local-variable-valuesに自動的に追加されることはありません。ユーザーがsafe-local-variable-valuesを直接カスタマイズすることで明示的に値を許さない限り、危険な変数をセットする前にEmacsは常に確認を求めます。

名前が非nilrisky-local-variableプロパティをもつすべての変数は危険だと判断されます。defcustomを使用してユーザーオプションを定義するとき、defcustomに引数:risky valueを追加することにより、ユーザーオプションにrisky-local-variableプロパティをセットできます。それに加えて名前が‘-command’、‘-frame-alist’、‘-function’、‘-functions’、‘-hook’、‘-hooks’、‘-form’、‘-forms’、‘-map’、‘-map-alist’、‘-mode-alist’、‘-program’、‘-predicate’で終わるすべての変数は自動的に危険だと判断されます。後に数字をともなう変数‘font-lock-keywords’と‘font-lock-keywords’、さらには‘font-lock-syntactic-keywords’も危険だと判断されます。

Function: risky-local-variable-p sym

この関数はsymが上記の条件にもとづき危険な変数なら非nilをリターンする。

Variable: ignored-local-variables

この変数はファイルによりローカル値を与えらるべきではない変数のリストを保持する。これらの変数に指定された任意の値は、完全に無視される。

“変数”‘Eval:’も抜け道になる可能性があるので、Emacsは通常はそれを処理する前に確認を求めます。

User Option: enable-local-eval

この変数は‘-*-’の行中、またはvisitされるファイル内のローカル変数リストにたいする、‘Eval:’の処理を制御する。値tは無条件に実行し、nilはそれらを無視することを意味します。それ以外なら各ファイルにたいして何を行うか、ユーザーに確認を求めることを意味する。デフォルト値はmaybe

User Option: safe-local-eval-forms

この変数はファイルローカル変数リスト内で‘Eval:’“変数”が見つかった際に評価しても安全な式のリストを保持する。

式が関数呼び出しであり、その関数がsafe-local-eval-functionプロパティをもつなら、その式の評価が安全かどうかはそのプロパティ値が決定します。プロパティ値はその式をテストするための述語(predicate)、そのような述語のリスト(成功した述語があれば安全)、またはt(引数が定数である限り常に安全)を指定できます。

テキストプロパティには、それらの値に関数呼び出しを含めることができるので抜け道になる可能性があります。したがってEmacsはファイルローカル変数にたいして指定された文字列値から、テキストプロパティを取り除きます。


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