一部のウィンドウシステムではユーザーがスクリーンにタッチしたり、タッチしながら指を動かすことで反応する入力デバイスがサポートされています。Emacsはこれらのタッチスクリーンと呼ばれる入力デバイスが生成したイベントをタッチスクリーンイベント(touchscreen event)として報告します。
タッチスクリーンが生成した個々のイベントのほとんどは、他のイベントのより大きなシーケンスの一部としての意味しかもっていません。たとえばタッチスクリーンをタップするという単純な操作はユーザーがタッチスクリーンに指を置いて離すという操作、ディスプレイをスクロールためのスワイプはタッチスクリーンに指を置いて何度も上(下)に動かしてから指を離すという操作を引き起こすのです。
タップやスクロールにたいしては一本の指で構成される単純なモデルで十分ですが、より複雑なジェスチャーには複数の指を追跡するためのサポートが要求されまづ。指が複数の場合には、それぞれの指の位置はタッチポイント(touch point)によって表されることになります。たとえば“ズームするためのピンチアウト”というジェスチャーは、ユーザーが指を2本置いて、それらの指を別個に反対方向へ動かすことから構成されます。ここでこれら2本の指による個別のポイント位置の間の距離によってディスプレイのズーム量、これらの位置を結ぶ想像上の線の中央位置によってズーム後にどこにディスプレイをパンする(振る)かが決まります。
下記の低レベルなタッチスクリーンイベントを使って、上述したタッチシーケンスすべてを実装できます。これらのイベントでは、ポイントはそれぞれポイントを識別する任意の番号、およびイベント発生時の指の位置を指定するマウス位置リスト(クリックイベントを参照)のコンスセルによって表現されます。
(touchscreen-begin point)
これはユーザーがタッチスクリーンにたいして指を押すことでpointが作成されたときに送信されるイベント。
(touchscreen-update points)
これはタッチスクリーン上のポイントの位置が変更されたときに送信されるイベント。pointsはカレントでタッチスクリーン上にあるタッチポイントの最新位置を含んだタッチポイントのリスト。
(touchscreen-end point)
これは他のプログラムにより奪われたりユーザーがタッチスクリーンから指を離したことによってpointがディスプレイ上に存在しなくなった際に送信されるイベント。