kill関数(kill functions)は削除関数のようにテキストを削除しますが、ユーザーがyankにより再挿入できるようにそれらを保存する点が異なります。これらの関数のほとんどは‘kill-’という名前をもちます。対照的に名前が‘delete-’で始まる関数は、(たとえ削除をundoできるとしても)通常はyank用にテキストを保存しません。それらは削除(deletion)関数です。
ほとんどのkillコマンドは主にインタラクティブな使用を意図しており、ここでは説明しません。ここで説明するのは、そのようなコマンドの記述に使用されるために提供される関数です。テキストをkillするために、これらの関数を使用できます。Lisp関数の内部的な目的のためにテキストの削除を要するときは、killリング内のコンテンツに影響を与えないように通常は削除関数を使用するべきでしょう。テキストの削除を参照してください。
killされたテキストは後のyank用にkillリング(kill
ring)内に保存されます。これは直前のkillだけでなく直近のkillのいくつかを保持するリストです。yankがそれをサイクル順に要素をもつリストとして扱うので、これを“リング(ring)”と称しています。このリストは変数kill-ring
に保持されており、リスト用の通常関数で操作可能です。このセクションで説明する、これをリングとして扱うために特化された関数も存在します。
特にkillされた実体が破壊されてしまわないような操作を参照するという理由から、“kill”という単語の使用が不適切だと考える人もいます。これは通常の生活において死は永遠であり、killされた実体は生活に戻ることはないことと対照的です。したがって他の比喩表現も提案されてきました。たとえば、“cutリング(cut ring)”という用語は、コンピューター誕生前に原稿を再配置するためにハサミで切り取って貼り付けていたような人に意味があるでしょう。しかし今となってはこの用語を変更するのは困難です。