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前のセクションでは、defcustom
にたいして型の詳細な仕様を作成する方法を説明しました。そのような型仕様に名前を与えたい場合があるかもしれません。理解しやすいケースとしては、多くのユーザーオプションに同じ型を使用する場合などです。各オプションにたいして仕様を繰り返すより、その型に名前を与えて、defcustom
それぞれにその名前を使用することができます。他にもユーザーオプションの値が再帰的なデータ構造のケースがあります。あるデータ型がそれ自身を参照できるようにするためには、それが名前をもつ必要があります。
カスタマイズ型はウィジェットとして実装されているめ、新しいカスタマイズ型を定義するには、新たにウィジェット型を定義します。ここではウィジェットインターフェイスの詳細は説明しません。Introduction in The Emacs Widget Libraryを参照してください。 かわりに、シンプルな例を用いて、カスタマイズ型を新たに定義するのに必要となる、最小限の機能について説明します。
(define-widget 'binary-tree-of-string 'lazy "A binary tree made of cons-cells and strings." :offset 4 :tag "Node" :type '(choice (string :tag "Leaf" :value "") (cons :tag "Interior" :value ("" . "") binary-tree-of-string binary-tree-of-string))) (defcustom foo-bar "" "Sample variable holding a binary tree of strings." :type 'binary-tree-of-string)
新しいウィジェットを定義するための関数は、define-widget
と呼ばれます。1つ目の引数は、新たなウィジェット型にしたいシンボルです。2つ目の引数は既存のウィジェットを表すシンボルで、新しいウィジェットではこの既存のウィジェットと異なる部分を定義することになります。新たなカスタマイズ型を定義する目的にたいしては、lazy
ウィジェットが最適です。なぜならこれは、defcustom
にたいするキーワード引数と同じ構文、同じ名前でキーワード引数:type
を受け取るからです。3つ目の引数は、新しいウィジェットにたいするドキュメント文字列です。この文字列は、M-x
widget-browse RET binary-tree-of-string
RETコマンドで参照することができるようになります。
これらの必須の引数の後にキーワード引数が続きます。もっとも重要なのは:type
で、これはこのウィジェットにマッチさせたいデータ型を表します。上記の例ではbinary-tree-of-string
は文字列、またはcarとcdrがbinary-tree-of-string
であるようなコンスセルです。この定義中でのウィジェット型への参照に注意してください。:tag
属性はユーザーインターフェイスでウィジェット名となる文字列、:offset
引数はカスタマイズバッファーでのツリー構造の外観で,子ノードと関連する親ノードの間に4つのスペースを確保します。
defcustom
は、通常のカスタマイズ型に使用される方法で新しいウィジェットを表示します。
lazy
という名前の由来は、他のウィジェットの場合、それらがバッファーでインスタンス化されるとき、他の合成されたウィジェットが下位のウィジェットを内部形式に変換するからです。この変換は再帰的なので、下位のウィジェットは、それら自身の下位ウィジェットへと変換されます。データ構造自体が再帰的な場合、この変換は無限再帰(infinite
recursion)となります。lazy
ウィジェットは、:type
引数を必要なときだけ変換することにより、この再帰を防ぎます。