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33.4 テキストの挿入

挿入(insertion)とはバッファーへの新たなテキストの追加を意味します。テキストはポイント位置、すなわちポイント前の文字とポイント後の文字の間に追加されます。挿入関数は挿入されたテキストの後にポイントを残しますが、前にポイントを残す関数もいくつかあります。前者の挿入をポイント後挿入(after point)、後者をポイント前挿入(before point)と呼びます。

挿入により挿入位置の後にあったマーカーは、テキストを取り囲むように移動されます(Markersを参照)。マーカーが挿入箇所をさしている際には、挿入によるマーカーの再配置の有無はそのマーカーの挿入タイプに依存します(Marker Insertion Typesを参照)。insert-before-markersのような特定のスペシャル関数は、マーカーの挿入タイプとは関係なく挿入されたテキストの後にそのようなすべてのマーカーを再配置します。

カレントバッファーが読み取り専用(Read Only Buffersを参照)、または読み取り専用テキスト(Special Propertiesを参照)を挿入しようとすると、挿入関数はエラーをシグナルします。

以下の関数は文字列やバッファーからプロパティとともにテキスト文字をコピーします。挿入される文字はコピー元の文字と完全に同一のプロパティをもちます。それとは対照的に文字列やバッファーの一部ではない個別の引数として指定された文字は、隣接するテキストからテキストプロパティを継承します。

テキストが文字列かバッファー由来なら、マルチバイトバッファーに挿入するために挿入関数はユニバイトからマルチバイトへの変換、およびその逆も行います。しかしたとえカレントバッファーがマルチバイトバッファーであったとしても、コード128から255までのユニバイトはマルチバイトに変換しません。Converting Representationsを参照してください。

Function: insert &rest args

この関数は文字列および/または1つ以上の文字argsをカレントバッファーのポイント位置に挿入して、ポイントを前方に移動する。言い換えるとポイントの前にテキストを挿入する。すべてのargsが文字列が文字列と文字のいずれでもなければエラーをシグナルする。値はnil

Function: insert-before-markers &rest args

この関数は文字列および/または1つ以上の文字argsをカレントバッファーのポイント位置に挿入して、ポイントを前方に移動する。すべてのargsが文字列が文字列と文字のいずれでもなければエラーをシグナルする。値はnil

この関数は他の挿入関数と異なり、挿入されたテキストの後を指すように、まずマーカーが挿入位置を指すよう再配置する。挿入位置からオーバーレイが開始される場合には、挿入されたテキストはそのオーバーレイの外側に出される。空でないオーバーレイが挿入位置で終わる場合には、挿入されたテキストはそのオーバーレイの内側に入れられる。

Command: insert-char character &optional count inherit

このコマンドはカレントバッファーのポイントの前に、characterのインスタンスをcount個挿入する。引数countは整数、characterは文字でなければならない。

インタラクティブに呼び出された際には、このコマンドはcharacterにたいしてコードポイントかUnicode名による入力を求める。Inserting Text in The GNU Emacs Manualを参照のこと。

この関数はたとえカレントバッファーがマルチバイトバッファーであっても、コード128から255のユニバイト文字をマルチバイト文字に変換しない。Converting Representationsを参照のこと。

inheritが非nilなら、挿入された文字は挿入位置前後の2文字からステッキーテキストプロパティ(sticky text properties)を継承する。Sticky Propertiesを参照のこと。

Function: insert-buffer-substring from-buffer-or-name &optional start end

この関数はカレントバッファーのポイント前に、バッファーfrom-buffer-or-nameの一部を挿入する。挿入されるテキストはstart (を含む)からend (を含まない)の間のリージョン(これらの引数のデフォルトは、そのバッファーのアクセス可能範囲の先頭と終端)。この関数はnilをリターンする。

以下の例ではバッファー‘bar’をカレントバッファーとしてフォームを実行する。バッファー‘bar’は最初は空であるものとする。

---------- Buffer: foo ----------
We hold these truths to be self-evident, that all
---------- Buffer: foo ----------

(insert-buffer-substring "foo" 1 20)
     ⇒ nil

---------- Buffer: bar ----------
We hold these truth∗
---------- Buffer: bar ----------
Function: insert-buffer-substring-no-properties from-buffer-or-name &optional start end

これはinsert-buffer-substringと似ているが、テキストプロパティをコピーしない点が異なる。

Function: insert-into-buffer to-buffer &optional start end

これはinsert-buffer-substringと同様だが、反対方向に機能する。テキストはカレントバッファーからto-bufferにコピーされる。テキストブロックはto-bufferのカレントポイントにコピーされて、(そのバッファーの)ポイントはコピーしたテキスト終端に進められる。start/endnilなら、カレントバッファーのテキスト全体をコピーする。

テキスト挿入に加えて、隣接するテキストからテキストプロパティを継承する他の関数についてはSticky Propertiesを参照のこと。インデント関数により挿入された空白文字もテキストプロパティを継承する。