5.4 コンスセルおよびリストの構築

リストはLispの中核にあたる機能なので、リストを構築するために多くの関数があります。consはリストを構築する基本的な関数です。しかしEmacsのソースコードでは、consよりlistのほうが多く使用されているのは興味深いことです。

Function: cons object1 object2

この関数は新しいリスト構造を構築するための、もっとも基本的な関数である。この関数はobject1CARobject2CDRとする新しいコンスセルを作成して、それから新しいコンスセルをリターンする。引数object1object2には任意のLispオブジェクトを指定できるが、ほとんどの場合object2はリストである。

(cons 1 '(2))
     ⇒ (1 2)
(cons 1 '())
     ⇒ (1)
(cons 1 2)
     ⇒ (1 . 2)

リストの先頭に1つの要素を追加するために、consがよく使用される。これをリストに要素をコンスすると言います。6たとえば:

(setq list (cons newelt list))

この例で使用されているlistという名前の変数と、以下で説明するlistという名前の関数は競合しないことに注意されたい。すべてのシンボルが、変数と関数の両方の役割を果たすことができる。

Function: list &rest objects

この関数はobjectsを要素とするリストを作成する。結果となるリストは常にnilで終端される。objectsを指定しないと空リストがリターンされる。

(list 1 2 3 4 5)
     ⇒ (1 2 3 4 5)
(list 1 2 '(3 4 5) 'foo)
     ⇒ (1 2 (3 4 5) foo)
(list)
     ⇒ nil
Function: make-list length object

この関数は各要素がobjectであるような、length個の要素からなるリストを作成する。make-listmake-string(文字列の作成を参照)を比較してみよ。

(make-list 3 'pigs)
     ⇒ (pigs pigs pigs)
(make-list 0 'pigs)
     ⇒ nil
(setq l (make-list 3 '(a b)))
     ⇒ ((a b) (a b) (a b))
(eq (car l) (cadr l))
     ⇒ t
Function: append &rest sequences

この関数はsequencesのすべての要素を含むリストをreturnします。sequencesにはリスト、ベクター、ブールベクター、文字列も指定できるが、通常は最後にリストを指定すること。最後の引数を除くすべての引数はコピーされるので、変更される引数はない(コピーを行なわずにリストを結合する方法についてはリストを再配置する関数nconcを参照のこと)。

より一般的にはappendにたいする最後の引数は任意のLispオブジェクトを指定できる。最後の引数のコピーや変換は行わない。最後の引数は新しいリストの最後のコンスセルのCDRとなる。最後の引数もリストならば、このリストの要素は実質的には結果リストの要素になる。最後の要素がリストでなければ、最後のCDRが(正リストで要求される)nilではないので結果はドットリストになる(リストとコンスセルを参照)。

以下はappendを使用した例です:

(setq trees '(pine oak))
     ⇒ (pine oak)
(setq more-trees (append '(maple birch) trees))
     ⇒ (maple birch pine oak)

trees
     ⇒ (pine oak)
more-trees
     ⇒ (maple birch pine oak)
(eq trees (cdr (cdr more-trees)))
     ⇒ t

appendがどのように機能するか、ボックスダイアグラムで確認できます。変数treesはリスト(pine oak)にセットされ、それから変数more-treesにリスト(maple birch pine oak)がセットされます。しかし変数treesは継続して元のリストを参照します:

more-trees                trees
|                           |
|     --- ---      --- ---   -> --- ---      --- ---
 --> |   |   |--> |   |   |--> |   |   |--> |   |   |--> nil
      --- ---      --- ---      --- ---      --- ---
       |            |            |            |
       |            |            |            |
        --> maple    -->birch     --> pine     --> oak

空のシーケンスはappendによりリターンされる値に寄与しません。この結果、最後の引数にnilを指定すると、それより前の引数のコピーを強制することになります。

trees
     ⇒ (pine oak)
(setq wood (append trees nil))
     ⇒ (pine oak)
wood
     ⇒ (pine oak)
(eq wood trees)
     ⇒ nil

関数copy-sequenceが導入される以前は,これがリストをコピーする通常の方法でした。シーケンス、配列、ベクターを参照してください。

以下はappendの引数としてベクターと文字列を使用する例です:

(append [a b] "cd" nil)
     ⇒ (a b 99 100)

以下は文字列をその文字列の文字のリストに変換する例です:

(append "abcd" nil)
     ⇒ (97 98 99 100)

上記例の手軽なショートカットが関数string-to-listです。

apply (関数の呼び出しを参照)の助けを借りることにより、リストのリストの中のすべてのリストをappendできます。

(apply 'append '((a b c) nil (x y z) nil))
     ⇒ (a b c x y z)

sequencesが与えられなければnilがリターンされます:

(append)
     ⇒ nil

以下は最後の引数がリストでない場合の例です:

(append '(x y) 'z)
     ⇒ (x y . z)
(append '(x y) [z])
     ⇒ (x y . [z])

2番目の例は最後の引数はリストではないシーケンスの場合で、このシーケンスの要素は、結果リストの要素にはなりません。かわりに最後の引数がリストでないときと同様、シーケンスが最後のCDRになります。

例外として最後の引数を除いたすべての引数がnil、かつ最後の引数がリスト以外の場合には、未変更のまま最後の引数をリターンする(この場合にはリターン値はリスト以外になる):

(append nil nil "abcd")
     ⇒ "abcd"
Function: copy-tree tree &optional vectors-and-records

この関数はツリーtreeのコピーをリターンする。treeがコンスセルなら同じCARCDRをもつ新しいコンスセルを作成してから、同じ方法によってCARCDRを再帰的にコピーする。

treeがコンスセル以外の場合、通常はcopy-treeは単にtreeをリターンする。しかしvectors-and-recordsが非nilなら、この関数はベクターとレコードもコピーします(そしてベクターの要素を再帰的に処理する)。tree引数は循環を含んでいてはならない。

Function: flatten-tree tree

この関数はtreeを“平坦化”したコピー( treeをルートとするコンスセルのツリーのすべての非nilな終端nodeとleave)をリターンする。リターンされたリストのleaveの順序はtreeでの順序と同じ。

(flatten-tree '(1 (2 . 3) nil (4 5 (6)) 7))
    ⇒(1 2 3 4 5 6 7)
Function: ensure-list object

この関数はobjectをリストとしてリターンする。objectがすでにリストならそれをリターンし、それ以外ならobjectを含む1要素のリストをリターンする。

これは通常はリストのときもあればそうでないときもある変数を使用する場合に有用であり、たとえば以下のような記述ができる:

(dolist (elem (ensure-list foo))
  (princ elem))
Function: number-sequence from &optional to separation

この関数はfromからseparationずつインクリメントして、toの直前で終わる数字のリストをリターンする。separationには正か負の数を指定でき、デフォルトは1。tonil、または数値的にfromと等しければ、値は1要素のリスト(from)になる。separationが正でtofromより小さい、またはseparationが負でtofromより大きければ、これらの引数は空のシーケンスを指示することになるので、値はnilになる。

separationが0で、tonilでもなく、数値的にfromとも等しくなければ、これらの引数は無限シーケンスを指示することになるので、エラーがシグナルされる。

引数はすべて数字である。浮動小数点数の計算は正確ではないので、浮動小数点数の引数には注意する必要がある。たとえばマシンへの依存により、(number-sequence 0.4 0.8 0.2)が3要素のリストをリターンして、(number-sequence 0.4 0.6 0.2)が1要素のリスト(0.4)をリターンすることがよく起こる。リストのn番目の要素は、厳密に(+ from (* n separation))という式により計算される。リストに確実にtoが含まれるようにするために、この式に適切な型のtoを渡すことができる。別の方法としてtoを少しだけ大きな値(separationが負なら少しだけ小さな値)に置き換えることもできる。

例をいくつか示す:

(number-sequence 4 9)
     ⇒ (4 5 6 7 8 9)
(number-sequence 9 4 -1)
     ⇒ (9 8 7 6 5 4)
(number-sequence 9 4 -2)
     ⇒ (9 7 5)
(number-sequence 8)
     ⇒ (8)
(number-sequence 8 5)
     ⇒ nil
(number-sequence 5 8 -1)
     ⇒ nil
(number-sequence 1.5 6 2)
     ⇒ (1.5 3.5 5.5)

Footnotes

(6)

リストの最後に要素を追加するための、これと完全に同等な方法はありません。listnameをコピーすることにより新しいリストを作成してから、neweltをそのリストの最後に追加する(append listname (list newelt))を使用することができます。すべてのCDRを辿って終端のnilを置き換える、(nconc listname (list newelt))を使用することもできます。コピーも変更も行なわずにリストの先頭に要素を追加するconsと比較してみてください。


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