3.1 整数の基礎

Lispリーダーは、10進数字のシーケンス(オプションで最初の符号記号と最後のピリオドをともなう)として整数を読み取ります。

 1               ; 整数1
 1.              ; 整数1
+1               ; これも整数1
-1               ; 整数−1
 0               ; 整数0
-0               ; 整数0

10以外の基数をもつ整数の構文は‘#’、基数表示(radix indication)、その後の1つ以上の数字から構成されます。基数表示は2進数(binary)は‘b’、8進数(octal)は‘o’、16進数(hex)は‘x’、基数radixにたいしては‘radixr’になります。したがって‘#binteger’は2進数、‘#radixrinteger’は基数radixintegerを読み取ります。radixの値として可能な値は2から36であり、最初のradix文字は‘0’–‘9’および‘A’–‘Z’から採択されます。英文字のcase(大文字小文字)は無視されて、最初の符号と最後のピリオドはありません。たとえば:

#b101100 ⇒ 44
#o54 ⇒ 44
#x2c ⇒ 44
#24r1k ⇒ 44

整数にたいして処理を行なうさまざまな関数、特にビット演算(整数にたいするビット演算を参照)を理解するためには、数を2進形式で見ることが助けになることがよくあります。

10進整数の5は2進数では以下のようになります:

...000101

(省略記号‘’は概念的に先頭ビットにマッチする無限個数のビットを意味する。ここでは無限個の0ビット。後の例でも‘’表記を使用する。)

整数の−1は以下のようになります:

...111111

−1はすべて1で表現されます(2の補数表記と呼ばれる)。

−1から4を減じることで負の整数−5が得られます。10進の整数4は2進では100です。したがって−5は以下のようになります:

...111011

このチャプターで説明する多くの関数は、数字の位置として引数にマーカー(マーカーを参照)を受け取ります。そのような関数にたいする実際の引数は数字かマーカーなので、わたしたちはこれらの引数にnumber-or-markerという名前を与えることがあります。引数の値がマーカーならマーカーの位置が使用され、マーカーのバッファーは無視されます。

Emacs Lispでは、テキスト文字は整数により表現されます。0から(max-char)までの整数は、有効な文字として判断されます。文字コードを参照してください。

Emacs Lispの整数はマシンのワードサイズに制限されません。しかしその背後にはfixnumsと呼ばれる小さい整数と、bignumsと呼ばれる大きい整数という2種類の整数が存在します。Emacs Lispコードは通常は整数がfixnumかbignumのいずれであるかに依存するべきではありませんが、Emacsの古いバージョンではfixnumだけがサポートされており、未だにfixnumだけを受け取るEmacs関数がいくつかあり、古いEmacs Lispコードがbignumを受け取ると問題が起こるかもしれません。たとえば古いEmacs Lispコードはeqで整数にたいする数値の等価性を安全に比較できましたが、bignumの登場により整数の比較にはeql=のような等価性にたいする述語を使うことが必要になりました。

bignumの値の範囲は主メモリー量、bignumの指数の表現に使用されるワードサイズのようなマシン特性、およびinteger-width変数により制限されます。これらの制限は通常はfixnumにたいする制限よりは寛大です。bignumが数値的にfixnumと等しくなることはありません。Emacsはfixnum範囲内の整数を、bignumではなく常にfixnumとして表現します。

fixnumの値の範囲はマシンに依存します。最小の範囲は−536,870,912から536,870,911(30ビット長の −2**29 から 2**29 − 1) ですが、多くのマシンはより広い範囲を提供します。

Variable: most-positive-fixnum

この変数の値はEmacs Lispが扱える“小さい”整数の最大値。典型的な値は32ビットでは 2**29 − 1 、64ビットでは 2**61 − 1 。

Variable: most-negative-fixnum

この変数の値はEmacs Lispが扱える数値的に最小の“小さい”整数。これは負の整数。典型的な値は32ビットでは −2**29 、64ビットでは −2**61、 。

Variable: integer-width

この変数の値は大きな整数の計算時にEmacsが範囲エラー(range error)をシグナルするかどうかを制御する負ではない整数。絶対値が 2**n (nはこの変数の値)より小さい整数の時は範囲エラーをシグナルしない。大きい整数を簡単に作成できればエラーがシグナルされない場合もあるが、通常は大きな整数の作成を試みると範囲エラーをシグナルする。この変数に大きな数値を設定すると、巨大な整数の計算にコストを要する可能性がある。

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