2.1 プリント表現と読み取り構文

オブジェクトのプリント表現(printed representation)とは、オブジェクトにたいしてLispプリンター(関数prin1)が生成する出力のフォーマットです。すべてのデータ型は一意なプリント表現をもちます。オブジェクトの入力構文(read syntax)とは、オブジェクトにたいしてLispリーダー(関数read)が受け取る入力のフォーマットです。これは一意である必要はありません。多くの種類のオブジェクトが複数の構文をもちます。Lispオブジェクトの読み取りとプリントを参照してください。

ほとんどの場合、オブジェクトのプリント表現が、入力構文としても使用されます。しかしLispプログラム内の定数とすることに意味が無いいくつかの型には、入力構文がありません。これらのオブジェクトはハッシュ表記(hash notation)でプリントされ、‘#<’、説明的な文字列(典型的には型名にオブジェクトの名前を続けたもの)、‘>’で構成される文字列です(“hash: ハッシュ記号”や“number sign: 番号記号”として知られている‘#’文字で始まることから“ハッシュ表記”と呼ばれる)。たとえば:

(current-buffer)
     ⇒ #<buffer objects-ja.texi>

ハッシュ表記は読み取ることができないので、Lispリーダーは‘#<’に遭遇すると常にエラーinvalid-read-syntaxをシグナルします。

このチャプターの以降のセクションにおいては、そのデータタイプを構成するLispデータタイプそれぞれにたいして読み取り構文とプリント表現を説明していきます。たとえば文字列型とそのサブセクションにおける文字列、ベクター型とそのサブセクションにおけるベクターの読み取り構文とプリント表現を参照してください。

他の言語では式はテキストであり、これ以外の形式はありません。Lispでは式は第一にまずLispオブジェクトであって、オブジェクトの入力構文であるテキストは副次的なものに過ぎません。たいていこの違いを強調する必要はありませんが、このことを心に留めておかないとたまに混乱することがあるでしょう。

インタラクティブに式を評価するとき、Lispインタープリターは最初にそれのテキスト表現を読み取り、Lispオブジェクトを生成してからそのオブジェクトを評価します(評価を参照)。しかし評価と読み取りは別の処理です。読み取りによりテキストにより表現されたLispオブジェクトを読み取り、Lispオブジェクトがリターンされます。後でオブジェクトは評価されるかもしれないし、評価されないかもしれません。オブジェクトを読み取るための基本的な関数readの説明は、入力関数を参照してください。

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