Xウィンドウシステムを使うGNU/Linuxのようなグラフィカルなディスプレイの場合、Emacsはグラフィカルなウィンドウに表示されます。テキスト端末の場合、Emacsは端末スクリーン全体を表示領域として使います。Emacsが占有する画面スクリーンや、グラフィカルなウィンドウを指して、フレーム(frame)という用語を使用します。Emacsの振る舞いは、どちらのフレームでも同じです。通常は1個のフレームだけで始まりますが、必要ならば新たにフレームを作れます(フレームとグラフィカルなディスプレイを参照)。
それぞれのフレームにはいくつかの領域が含まれています。いちばん上のフレームはメニューバー(menu bar)で、メニューにある一連のコマンドにアクセスできます。グラフィカルなディスプレイでは、メニューバーのすぐ下にツールバー(tool bar)があり、アイコンをクリックすることにより編集コマンドを実行できます。いちばん下のフレームはエコーエリア(echo area)で、メッセージが表示されたり、Emacsが入力を求める際に使用されます。
(もしあれば)ツールバーの下とエコーエリアの間の、フレームの主要な領域の部分を、ウィンドウ(the window)といいます。このマニュアルでは“ウィンドウ”という言葉を、上記のような場合に使います。グラフィカルなディスプレイのシステムでは、“ウィンドウ”という言葉を違う意味で用いますが、上述したとおり、そのようなグラフィカルなウィンドウのことは、“フレーム”と呼ぶことにします。
Emacsのウィンドウには、バッファー(buffer) — 編集、または閲覧しているテキストやグラフィック — が表示されます。グラフィカルなディスプレイでは、ウィンドウの片側にスクロールバー(scroll bar)あり、これを使ってバッファー内をスクロールできます。ウィンドウのいちばん下の行は、モードライン(mode line)です。これには保存されてない変更や、使用されている編集モード、現在のライン番号など、バッファーについての様々な情報が表示されます。
Emacsを起動すると、通常フレームには1つのウィンドウが表示されます。しかしこのウィンドウを水平方向、または垂直方向に分割して複数のウィンドウを作成し、それぞれ異なるバッファーを表示することもできます(複数ウィンドウを参照)。
どんな時でも、1つのウィンドウが選択されたウィンドウ(selected window)となります。グラフィカルなディスプレイでは、選択されたウィンドウには目立つカーソル(通常は塗りつぶされて点滅している)が表示され、他のウィンドウには目立たないカーソル(通常はぬりつぶされていない四角)が表示されます。テキスト端末では、選択されたウィンドウのカーソルだけが表示されます。選択されたウィンドウ上に表示されているバッファーを、カレントバッファー(current buffer)と呼び、それが編集が行われているバッファーとなります。多くのEmacsコマンドはカレントバッファーに暗黙に適用され、選択されてないウィンドウに表示されているテキストは参照用に使用します。もしグラフィカルなディスプレーで複数のフレームを使っている場合、特定のフレームを選択すると、そのフレームのウィンドウが選択されます。