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翻訳とは、言語的な難しさをともなう作業です。翻訳においてどのような決定をしたのか、その選択に関してドキュメントを残す必要があるでしょう。これらのドキュメントは、翻訳者のコメントとしてPOファイルに保存されます。これは、翻訳者が自由に作成・削除、または変更ができるコメントで、彼女が後でPOファイルを見直すときなどに便利です。
最初の‘#’の後に空白がないコメント、たとえば‘#.’や‘#:’ではじまるコメントは、翻訳者のコメントではありません。これらは、gettext
ツールにより作成されたコメントです。それらのシステムが追加したコメントは、翻訳者が変更するべきではないコメントなので、以下で説明するコマンドの対象外です。PO Filesを参照してください。
以下のコマンドは翻訳を変更するコマンドと似ているので、一般的な原則は同様に適用できます。Modifying Translationsを参照してください。
翻訳者のコメントを対話的に編集します(po-edit-comment
)。
翻訳者のコメントをkillリングに保存してから、削除します(po-kill-comment
)。
翻訳者のコメントをkillリングに保存するだけで、削除はしません(po-kill-ring-save-comment
)。
翻訳者のコメントを、killリングのもので置き換えます(po-yank-comment
)。
これらの、翻訳文字列を変更するためのPOモードの類似コマンドは、翻訳文字列の代わりに翻訳者のコメントを処理する以外は、同じように動作します。詳細はすでに説明済みなので、以下ではこれらのコマンドを簡単に説明します。Modifying Translationsを参照してください。
#コマンド(po-edit-comment
)は、POファイルのカレントエントリーにたいする翻訳者コメントのコピーを含む、新しいEmacsウィンドウをオープンします。エントリーにそのようなコメントがない場合、POモードは翻訳者がエントリーにコメントを追加したいと解釈し、空のスクリーンが表示されます。編集前にコメントマーク(#
)とそれに続くスペースは自動的に削除され、編集後に自動的に再付加されます。陳腐化したエントリーにたいする翻訳者コメントは、非コメント化とコメント化の操作が2度行われます。編集ウィンドウでC-c C-cキーを押すと、コメントの編集を終了します。詳細については、Subeditを参照してください。
po-subedit-mode-hook
に関数が登録されている場合には、編集バッファーに文字列が挿入されたときに実行されます。
Kコマンド(po-kill-comment
)は、翻訳者コメントをkillリングに保存してから削除します。Wコマンド(po-kill-ring-save-comment
)は、翻訳者コメントをkillリングにコピーするだけで、カレントエントリーのコメントは変更しません。Yコマンド(po-yank-comment
)は、翻訳者コメントをkillリングの文字列で置き換えます。このコマンドを繰り返し入力すると、挿入されたコメントはkillリングに保存された他の文字列で順に置き換えられます。
killリングの文字列は、すべて同じ性質をもちます。翻訳された文字列と翻訳者のコメントに違いはありません。たとえば翻訳者が翻訳を終了したとき、以前の翻訳の何が悪かったのかをドキュメント化して覚えておこうと、コメントを付与したい場合を考えます。彼女は翻訳者コメントで、以前の翻訳を引用したいと思うのではないでしょうか。それを行うには、まず翻訳者コメントを、killリングに残っている以前の翻訳で初期化するでしょう。すでにkillリングに保存されている以前の翻訳を使って編集するには、#の前にM-wとタイプすれば、以前の翻訳がkillリングに保存されるので、それに説明文などを追加すればよいでしょう。
すでに何らかの翻訳者コメントがあり、そのコメント全体を置き換えるのではなく翻訳者がコメントを追加したい場合を考えてみましょう。その場合には#でコメントを編集する必要があります。編集ウィンドウが開いたら、Emacsの標準コマンドのC-y(yank
)とM-y(yank-pop
)で、以前の翻訳を取得できます。